2008年10月2日木曜日

Peter Szendy

今フランスで(ポピュラー)音楽研究をするんだったら絶対に避けては通れないと思われるピーター・サンディー博士に会うことが出来ました。かな〜り悪戯っぽいひとです。かつ、エピキュリアン。2000年に上梓された『ECOUTE』という本がものすごく評判になって、各国語に訳されています。日本語訳もずいぶん前から出る出ると言われているんですが、まだ出ていない。日本の友人たちがみんな待望しているから、早く出すようにと言っといた(笑)。

で、今月9日に新著が刊行されるとのこと。「Tubes : la philosophie dans le jukebox」というタイトルで、ポピュラー音楽を扱った論考となる。フランスの俗語でヒット曲のことをチューブと言うのだが、曲がヒットすることで、同じメロディーが繰り返され、大量生産され、大衆化・通俗化するという一面と、そのメロディーが個人の頭や体に絡みつき、あくまで個人的な、独特な経験(アウラ???)として経験されるということの矛盾を巡る哲学的論考。ちなみにサブタイトルは、マルキ・ド・サドの「la philosophie dans le boudoir(閨房哲学)」のパロディ。こりゃ今すぐ予約だよな。

前言ったような、フランスの音楽教育制度の矛盾(コンセルバトワールと大学の分業制度)を実際に生きてきた人だし、自分もそういうなかで教えてきているひとだから、やっぱりいろいろ役に立つヒントを教えてもらった。サンディー博士にとって、この分業制のなかで音楽実技と音楽理論を学ぶという作業は、まさに「スキゾフレニック」な事に映るそうで、大学で音楽学を専攻するというのは、大抵、実技方面で職にあぶれた時の滑り止め的な意味なんだそう。ハタから見てると判らんよな、こんなこと。

「ポピュラー音楽研究って、面白いけど、どうして誰も音楽そのものを分析しないの?」と非常に率直なコメントを頂きました。

昔、Ircamと社会科学高等研究院(EHESS)が共同で、現代音楽の理論と実技を統合したものすごい修士コースを設けていたらしく、普通の科目のほかに、世界中から作曲家やプロデューサーが来てマスタークラスをやっていいて、それにお金がかかり過ぎて今では閉鎖されているそう。聞いたことあるようなないような感じなんですが、もしなにかご存知の方がいれば、是非教えていただきたいです。

それでは。

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